「手紙」


 故郷を遠く離れて暮らすシルフィスは、時折きちんと家族に手紙を書いている。
(えーっと…今日は何を書こう…。)
 書いているのはとりとめもない日常のこと。
 訓練は結構きついけれど楽しい、とか。
 すごく綺麗な夕日が見える場所があって、そこから遠くを見ていると村を思い出す、とか。
 なかでも1番たくさん書いているのは、出会った人のこと。
 一番始めに書いたのは、ガゼルのことだった。

『すごく元気がいいんだ。それに、いつだって明るいし。お互い頑張って騎士になろうって言ってる。』

 その次の手紙に書いたのは、隊長のこと。

『余計なおしゃべりはなさらない方だけど、きちんと気配りはしてくださる方だよ。剣の腕も素晴らしいし、いざって時には本当に頼りになる方だ。』

 そして、今度の手紙は…
(やっぱり、姫のこと、かな…。)
 
 友達になったディアーナ姫は、時折強引だけれど…いい方だ。
 ふくれた顔も、笑顔もとても可愛らしい。
 なにかにつけ、にじみ出るのは育ちの良さ。
 じゃじゃ馬ではあるけれど…。
(ふふ、お転婆だからな…姫は。)
 女性に分化するなら、姫のように可愛らしくありたい…と思う。

(ええと…どうやって書こう…。)
 姫にお聞きしたところ、「ありのままのわたくしを書いてくださいまし」と答えが返ってきた。
(ありのままって…。)

 しょっちゅうお忍びばかりして、よく街でお会いする、とか。
 剣を自分も使ってみたくて、レオニス隊長にねだっては困らせている、とか。
 家庭教師を次々と首にしてばかりいる…とか。

(…書けないよなあ…いくらなんでも…。)
 それでも、とても愛らしい姫が、大好きなのだけれど。

『ディアーナ姫とも仲良くさせていただいています。一緒にいて、とても楽しい方です。可愛らしい方で…騎士として、いつの日かお守りしたいと思います。』


 そして、私の手紙は続いていく。クラインでの楽しい思いを綴り続けて…。
 想いは、いつもひとつ。
(私は、元気だからね…。)




片加 凪さんのあとがき>
シルフィスもの、ということで書いてみましたがいかがでしょうか。
ディアーナとシルフィスの会話を思い返して書いてみました。

凪さんのHPで777HITを踏んだ記念に頂きました。
「シルフィスのお話」という指定だけのとんでもないお題をリクエストしたにもかかわらず、こんなにステキなお話を頂きました!
さすが凪さん、ありがとうございました♪♪♪
櫻井 映里(2000.3.7)


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